きっかけは会社の健康診断
このへんで、ウエちゃんのIgA腎症について、これまでの経緯を簡単に振り返っておこうと思う。このブログを読まれている方の中には、同じIgA腎症の患者さんもいらっしゃると思うが、発症年数や各種検査の数値が同じ程度の方にはご自身に近い事例として参考になるかもしれないし、そうでない方には参考のまた参考くらいにしかならないかもしれない。いずれにしても、このブログを読む前提として、知っておいてもらえたらと思う。
きっかけは会社の健康診断。1994年に初めて尿検査の結果に異常があるため「要再検査」という結果が。しかし、忙しかったこともあってか、結局再検査には行かずじまい。そして、翌年の健康診断で再び「要再検査」という結果が出たので、一応行っておいたほうがよいかも?っていうくらいの軽い気持ちで病院へ。
「慢性腎炎の疑いがあります」って?
近くの開業医の病院(内科か、泌尿器科のどっちか。覚えていない。)で再検査してもらったところ、やはり蛋白と潜血が見られるということで、大きい病院でしっかり検査してもらうように言われる。そして、紹介状を書いてもらった病院へ行って検査を受けると、「慢性腎炎の疑いがあります。すぐ入院してください。精密検査が必要です。」と言われ、目が点になる。なにせ自覚症状が全くないのだから、急にそんなこと言われても・・・って感じだった。2週間に及んだ検査入院
そして、入院。ここで生まれて初めての腎生検を受ける。このときは、針腎生検。腎生検後は、ベッドに仰向けで寝かせられ、おしっこの管を入れられて、24時間は身動きがとれないという地獄を味わう。でまた、そういうときにかぎって、会社の2年後輩でアイドル的存在だった女の子がわざわざ見舞いに来てくれたりして。あと、会社の同期が見舞いに来てくれて、羽賀研二と梅宮アンナのバカップルヌード写真集を置いてってくれたりね。あ、閑話休題(汗)腎生検の結果、慢性腎炎の「IgA腎症」と診断された。当時の主治医からは次のようなことを言い渡された:
- 腎臓は一度機能を損なうと元には戻らない臓器である。
- つまり、慢性腎炎(IgA腎症)は治らないので、一生付き合っていく必要がある。
- 腎機能の低下が進んで、ある一定ラインを超えてしまうと人工透析になる。
- 将来、人工透析になるかどうかは分からないが、腎機能は少しずつ低下していくはず。
- 腎臓病は痛みなどの自覚症状が全くないため、"サイレントキラー" ともいわれている。
- 腎生検の結果、腎炎は初期段階であり。、腎機能はまだ9割以上は機能している。
- 今後は、いかにして腎機能の低下を食い止めていくかが重要なカギである。
絶望感。虚脱感。もう頭の中は真っ白。
さらに、当時は社会人になって4年目くらいの独身で、一人暮らしをしていたが食生活がひどかった...。カップラーメンばかり食べて、スナック菓子もバリバリ食べてたし、今思い出してもとんでもない状態。それを聞いた主治医から、退院時に食事制限を言い渡された。「1日あたり:タンパク質 50グラム以下、塩分 6.0グラム以下」
最初は全くピンとこなかったが、栄養指導を受けるため、栄養士から説明を受けたときに愕然とした。今までの感覚で食事していたら、あっという間にオーバーしてしまう。いくつか例に挙げると、次のような感じだ。
食品100グラム中のたんぱく質の含有量:引用元:食品中のたんぱく質含有量|国立循環器病研究センター
- 豚肉肩ロース:17.7グラム
- 豚肉ばら:13.4グラム
- 鶏もも:17.3グラム
- ウインナー:13.2グラム
- 鶏卵:12.3グラム
- まぐろ:24.3グラム
- うなぎ(蒲焼):23.0グラム
- 塩さけ:22.4グラム
- ぶり:21.4グラム
- たらこ 24.0グラム
- くるまえび 21.6グラム
引用元:食品に含まれる塩分量|国立循環器病研究センター
塩分量の目安:
- 食パン 1枚:0.8グラム
- うどん(ゆで)1玉:0.9グラム
- 食塩 小さじ1:5.0グラム
- ソース 大さじ1:1.3グラム
- しょうゆ 大さじ1:2.6グラム
- トマトケチャップ 大さじ1:0.6グラム
- フレンチドレッシング 大さじ1:0.5グラ
- マヨネーズ 大さじ1:0.3グラム
- 味噌汁 1杯:1.9グラム
- 即席ラーメン 1袋:7.7グラム
- スパゲッティ(ミートソース):3.6グラム
- ソース焼きそば:3.3グラム
- カレーライス:2.3グラム
- ビーフハンバーグ:2.9グラム
- 肉じゃが:2.4グラム
どうだろう。肉や魚はほとんど食べれない。食パンやうどんにも塩分は含まれているのだ。「1日あたり:タンパク質 50グラム以下、塩分 6.0グラム以下」というのは、1日の3食合計どころか、1食だけでも、すぐにオーバーしてしまう量だ。もうほとんど何も食べれない。外食だってできない。しかも、それがこれから死ぬまで一生続くのか・・・。なんでオレが? 絶望感。虚脱感。もう頭の中は真っ白だった。
食事制限、実は主治医のショック療法だった
が、これは後で分かるのだが、あまりにもずさんな食生活ぶりにあきれた主治医が、ガツンと言い聞かせるために、あえて厳しい食事制限を課しただけだった。腎臓の状態としては、特に食事制限をする必要はなかったのだ。だが、これをきっかけにして、タンパク質と塩分を意識するようになったので、今考えると「良い薬」だったと思っている。その後、1995年4月から毎月1回、定期健診のために通院し、尿検査と採血で数値を確認しながら、経過観察を15年以上続けることになる(「その2:15年以上の経過観察」へ続く)。